第十一章 サイカイ

2/16
前へ
/194ページ
次へ
 ハッ。  窓から差し込む朝の光とともに、私はベッドの上で目を覚ました。  何だろう。凄く、胸がドキドキしている。顔も火照っている。  恐い夢でも見たのだっけ?  それにしては恐怖感や切迫感はなく、不思議な高揚感を感じている。  寝不足から来ているのだろうか、その高揚感と倦怠感が混ざり合った妙な感覚が、私の 体を満たしている。  朝日が眩しい。首を捩じり、時計を見る。 ―まだ、六時半。三時間しか寝てない…―  これでは寝不足にも、なるわけだ。 ―それもこれも、みんな、翠のせいだ―  瞼の裏に、翠の顔が浮かぶ。暢気な笑顔が憎たらしい。  ほんとにもう。こんなに、私を心配させて…。  翠のせいで眠れなかったよ。  翠の顔が泣き顔に変わる。 ―泣き虫だな。そんなに大泣きすることないでしょ。  あなたの方が悪いのに…、私の胸のほうが痛むじゃない…。  …そりゃ、私も、たしかに言い過ぎたけど  私が…、先に…、謝ってあげるから。  だから…。だから、家を出るなんて、言わないで…―
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加