第十一章 サイカイ

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『ごめんなさい。私が居るせいで、お姉ちゃんがいつも悪者にされていた。その事に気が つかずにいて、ごめんなさい。私は家を出ます。今迄、ありがとうございました。』  翠の字だ。  慌てて自室を飛び出し、翠の部屋のドアを開ける。  誰も居ない。  ベッドは綺麗に整えられ、机の上もいつになくきちんと整頓されている。 ―本当に家出した?―  心臓を鷲掴みされたように、体が震えあがる。  翠の部屋に入って、様子を確かめる。  外出時に持ち歩くリュックが無い。  お気に入りのコミックが本棚から抜かれている。  パジャマも、翠の大好きなアニメキャラの縫いぐるみも消えている。  私の脳裏に、大切な持ち物を泣きながらリュックに詰め込む翠の姿が浮かぶ。 「ほんとに…家出したんだ」  転げるように一階に下りる。  玄関の様子を確かめる。  翠が一番気に入っているバスケシューズが無い。  いよいよ本当に家出だ。  ダイニングキッチンに駆け込む。  ちょうど、お母さんが朝食の準備中だった。 「おはよう。どうしたの? 朝から、慌て…」  その言葉の終わる前に、ひしと母の腕に縋り付く。
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