第十一章 サイカイ

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「大変! 翠が家出した!」  え…?  怪訝な顔で私を見つめる母に、翠が残していったメモを見せる。  母の顔色が変わる。 「昨日の夜、翠が家を出るって言ってきたの。私、私…、その時、早く居なくなってって 言っちゃったの…。私、一体どうしよう」 「とにかく、落ち着きなさい。翠は部屋に居ないのね?」 「リュックが無くなってて、他にも翠が好きだった物が無くなってる。靴も無いし…」 「じゃあ、本当に…」  どうした、どうした。  私と母の只ならぬ雰囲気を感じたのか、リビングからお父さんがやってきた。  お母さんが翠のメモを手渡す。  メモに目を通したお父さんが絶句する。 「とにかく、翠の立ち回りそうな所を手分けして捜しましょう」  最初に落ち着きを取り戻した母が、指示を出す。 「お母さん。翠は、咲穂里姉ちゃんのとこに行く気がじゃないかな」 「そうね。それが、一番ありそうね。行くとしたら……電車」 「じゃあ、私は駅の方を捜してくる」 「お願いね。咲穂里ちゃんには私の方から連絡しておく。それから、私はアウトレットの 方を探してみる。あそこからは、長距離バスが出てるから」 「分かった」 「あの…。俺は何を…」  お父さんがオロオロしている。 「あなたはここに居て。連絡係が必要よ。それと、一時間経っても翠が見つからなかった 場合は、警察と学校に連絡して」 「うむ。分かった」 「お父さん。もしも、翠が戻ってきたら、引き留めておいて。私が、凄く反省している。 謝ってたって伝えて!」
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