第十一章 サイカイ

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 手筈は決まった。  私は二階の自室に取って返すと、走り回れるように軽快な服に着替える。  急いで一階に戻り、玄関に向かう。 「美寿穂、待ちなさい。これ、持ってって」  お母さんに呼び止められ、トートバックを渡された。 「何?」と問うと 「あなた、朝ご飯食べてないでしょ。それに、翠も食事した形跡がないし。もしもの時は これを食べなさい」  トートバッグの中を検めると、袋詰めロールパンとパック入り牛乳が二本入っていた。  何て、手回しが良いんだ。お母さん。 「じゃあ、行ってくる」  靴を履いて玄関を出る。 「探すのに夢中で怪我したりしないでね。車にも注意するのよ」 「分かった!」と大声で返事をして玄関を飛び出した。  大急ぎで、駅の方角へ走る。  走りながら、様々なマイナスのイメージが頭の中に涌いてくる。  翠が見つからなかったどうしよう。  泣きながら歩いてて、交通事故にあったりしていないだろうか。  騙されて誘拐されたりしていないだろうか。  まさかとは思うけど、命を粗末にするような真似をしていないだろうか。  想像するだけで、目の前が暗くなる。  それもこれも、みんな私が悪いんだ。  自分の心にのしかかった不安を、翠に投げ付けた。  自分の力で解決すべきだったのに。 「翠。ごめんね。ごめんね」  涙で視界がくもってくる。
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