第十一章 サイカイ

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 キーッ。  突然、直ぐ間近で自転車のブレーキ音。  ぶつかる!!  咄嗟に身を翻す。  その拍子に、私はその場に転んでしまった。 「す、すみません」  謝りながら、顔を上げる。  あれ?  いま、自転車と衝突した筈なのに、肝心の自転車が見当たらない。  私、何やってるんだろう。幻覚でも見たのか?  不思議に思いながら、立ち上がろうとして、左膝に痛みが走る。  転んだ拍子に膝を擦りむいた。血が滲んでいる。  よろけながら立ち上がる。  全く散々な日だ。  そのまま、歩きだそうとする。  イタッ。  思わず声が出た。  擦りむいた膝に地面の砂粒がこびりついている。  このままじゃ、化膿するかも。  何処かで、洗わないと…。  辺りを見回すと、十字路を曲がった少し先に公園が見える。  たしか、あそこには水道があったはず。  そのことを思い出して、公園へ小走りで急ぐ。
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