第十一章 サイカイ

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「濱野さん。まずは、傷の手当てをしよう」  暫く経って、三笠君に声をかけられた。  そのまま三笠君に促されて、ベンチに腰を下ろす。 「丁度、傷バンソウコウを持ってるんだ」  そう言いながら、三笠君がテキパキと傷の手当てを進める。 「あの…」  私の脳裏には数々の疑問が沸き起こっている。 「あの、どうして妹と一緒に居たんですか?」 「アカネが居なくなったんで、捜していたんだよ」  三笠君がベンチの脇にある自転車を顎で指し示す。  その自転車の前籠には綺麗な赤毛のネコがうずくまっていた。  アカネって、あの猫のこと? 「そうしたら、途中で翠ちゃんとすれ違ってさ。翠ちゃんとは初対面だけど、濱野さんに そっくりだから、直ぐに翠ちゃんだって分かったよ」  え?、え? どういうこと? 私、自分に妹がいる事を三笠君に話した覚えがないんだ けど。それに、なんで翠の名前を知ってるの? 「それで、ピーンときたんだ。だから『翠ちゃんが家出して、お姉さんが凄く心配してる から、早くお家に帰ろう』って、翠ちゃんと此処まで来たんだ」  また、三笠君が謎なことを言う。  顔が似てるから、翠が私の妹と推理するまでは良いとして、何故それだけで、翠が家出 したって分かるんだろう。
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