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「じゃあ、二人きりで話したいことも有るだろうから、僕は少し席を外すよ」
傷の手当てが終わると、三笠君は自転車を押して、二つ隣にベンチに移動した。
残された翠と私に沈黙の時間が訪れる。
話たいことは沢山あるのに、何と言って声をかけたら良いか分からない。
「あの。お姉ちゃん」
翠が消え入りそうな声で話し掛けてきた。
「何」と優しく問い返す。
「お姉ちゃん。私のこと怒ってない?」
「怒っていないよ。ごめんね。昨日は、私、色んな事が合って虫の居所が悪かったんだ。
それを、翠にぶつけちゃった。ほんとにごめんね」
「私が…妹でも構わない?」
そうか。翠は、私の発した『翠は妹じゃない』という言葉を気にしているんだ。
「許してね。酷いこと言ったね。翠は、私の一番大切な妹だよ」
「そう、良かった…」翠が大きく息を吐く。
私は翠の手を握りしめる。翠が私の手を握り返す。
湿りけと温もりが伝わって来る。
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