第十一章 サイカイ

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「じゃあ、二人きりで話したいことも有るだろうから、僕は少し席を外すよ」  傷の手当てが終わると、三笠君は自転車を押して、二つ隣にベンチに移動した。  残された翠と私に沈黙の時間が訪れる。  話たいことは沢山あるのに、何と言って声をかけたら良いか分からない。 「あの。お姉ちゃん」  翠が消え入りそうな声で話し掛けてきた。 「何」と優しく問い返す。 「お姉ちゃん。私のこと怒ってない?」 「怒っていないよ。ごめんね。昨日は、私、色んな事が合って虫の居所が悪かったんだ。 それを、翠にぶつけちゃった。ほんとにごめんね」 「私が…妹でも構わない?」  そうか。翠は、私の発した『翠は妹じゃない』という言葉を気にしているんだ。 「許してね。酷いこと言ったね。翠は、私の一番大切な妹だよ」 「そう、良かった…」翠が大きく息を吐く。  私は翠の手を握りしめる。翠が私の手を握り返す。  湿りけと温もりが伝わって来る。
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