第十一章 サイカイ

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 今、翠と私は、ベンチに腰掛けてロールパンを頬張っている。  ―翠がお腹を空かしているかもしれない―  そう言って、お母さんが持たせてくれたパンだ。  心配している両親には申し訳ないけど、すっかり仲直りした私達は、ちょっとした遠足 気分で朝ご飯を楽しんでいる。  さっき、翠が見つかった事をお母さん達に連絡した。もうすぐ両親がここにやって来る だろう。そうしたら、翠も私もこってりと油を搾られるに違いない。  それまでのつかの間の平和だ。  私達だけで食事するのは気が引けるので、三笠君にもおすそ分けしようとしたけれど、 僕は食べてきたからと遠慮された。  代わりに、牛乳を分けてほしいと言われたので、牛乳パックを手渡した。  そうしたら、掌で皿を作った上に牛乳を垂らし、アカネという猫に飲ませている。  三笠君、相当の猫好きだな。  アカネって猫も、ほっそりして姿態で、顔立ちも可愛いらしい。  見ているだけで微笑ましくなって来る。  ああ、私があの猫だったら良いのに…。などと埒もない事を考える。
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