第十一章 サイカイ

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 タタタタタタ。  そうこうするうちに、公園の入り口から両親が駆け込んできた。  翠の顔に緊張の色が表れる。翠が体を固くしているのが分かる。 「翠、翠…」  お母さんがオロオロしながら駆け寄ってくる。 「お母さん…」  翠がベンチから立ち上がる。  それと同時に、お母さんが翠を抱きすくめる。 「翠…。良かった…。無事で…」  続いて、お父さんもやって来て、ひしと抱き合う翠とお母さんを見つめている。  お母さんと翠は暫くの間、一塊になっていたが、やがてゆっくりと体を離す。 「翠。聞かせてちょうだい。なんで家出なんかしたの、みんなを散々心配させて」  いけない。お母さん、翠が見つかったんで、お怒りモードのスイッチが入ったらしい。  私は、慌てて二人の間に割って入る。 「お母さん! 翠は悪くないの。私が翠に酷い事を言ったの。翠はそれがショックで家を 出た、だから悪いのは私。翠を叱るなら、私を叱って下さい」  すると、直ぐさま翠が私とお母さんの間に割って入る。 「お姉ちゃんは悪くない。お姉ちゃんを傷つける事を言った私が悪いの。そのうえ、家出 までして。悪いのは私。だから私を叱って」 「ううん。翠は悪くない。みんな、わたしのせい」 「ううん。お姉ちゃんは悪くない。私が悪いの」  私と翠のやり取りを見ていたお母さんが、溜息を漏らす。 「あなたたち。そんなに仲がいいんなら、もう喧嘩はしない。翠も家出なんかしないの」  母娘三人がにらめっこのように顔を付き合わせる。  その様子が自分達で可笑しくなって、笑いが込み上げて来た。 「とにかく、お家に帰りましょう。皆、朝ごはんがまだだから」  という話しに決まった。
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