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ムニッと唇に柔らかい物が触れる感覚。
あれっ?
私、つい最近これと同じ感触を感じた。
目の前に居る三笠君と目が合う。
その時、私の脳裏に三笠君の大写しの顔のイメージが飛び込んできた。
息が詰まる感覚。早鐘を打つ心臓。首筋が燃えるような熱さ。
幾つもの感触が私の中に蘇って来る。
そうだ、私、キスしたんだ。三笠君と。
キスシーンに続くように、数々のイメージが復活していく。
白い草原、水の流れ、公園、女の子、また白い草原、古墳、素子さん。
そして、白い猫。黒い顔に髭のような模様のある猫。
ネコモリサマ。
そうだ。全て思い出した。
私はネコモリサマの恩返しで、翠を猫に変えてしまったんだっけ。
それを私と三笠君で元に戻したんだ。
「思い出した?」
「うん。思い出した。ありがとう、三笠君のおかげで、翠が人間に戻れた」
思い切りの勢いで三笠君に抱き着く。
「ありがとう。ありがとう」
自然と涙が湧いて来た。
三笠君が優しく私を抱きしめてくれる。
翠が人間に戻った。翠と仲直りもできた。
三笠君とも心が通じた。
私が三笠君を想っているのと同じように、三笠君も私を想ってくれている。
私、こうやって三笠君の胸を独り占めして良いんだ。
私は三笠君の胸のなかで安心して涙を流し続ける。
それは、暖かい幸せの涙だった。
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