第十一章 サイカイ

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 ムニッと唇に柔らかい物が触れる感覚。  あれっ?  私、つい最近これと同じ感触を感じた。  目の前に居る三笠君と目が合う。  その時、私の脳裏に三笠君の大写しの顔のイメージが飛び込んできた。  息が詰まる感覚。早鐘を打つ心臓。首筋が燃えるような熱さ。  幾つもの感触が私の中に蘇って来る。  そうだ、私、キスしたんだ。三笠君と。  キスシーンに続くように、数々のイメージが復活していく。  白い草原、水の流れ、公園、女の子、また白い草原、古墳、素子さん。  そして、白い猫。黒い顔に髭のような模様のある猫。  ネコモリサマ。  そうだ。全て思い出した。  私はネコモリサマの恩返しで、翠を猫に変えてしまったんだっけ。  それを私と三笠君で元に戻したんだ。 「思い出した?」 「うん。思い出した。ありがとう、三笠君のおかげで、翠が人間に戻れた」  思い切りの勢いで三笠君に抱き着く。 「ありがとう。ありがとう」  自然と涙が湧いて来た。  三笠君が優しく私を抱きしめてくれる。  翠が人間に戻った。翠と仲直りもできた。  三笠君とも心が通じた。  私が三笠君を想っているのと同じように、三笠君も私を想ってくれている。  私、こうやって三笠君の胸を独り占めして良いんだ。  私は三笠君の胸のなかで安心して涙を流し続ける。  それは、暖かい幸せの涙だった。
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