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「す、すみません」
目に涙が滲む。その滴が零れるのを、懸命にこらえながら頭を下げる。
惨めだ。
よく見ると、私の尻餅に巻き込まれたのか、さっきの猫が大の字なって伸びている。
私を撥ねそこなった自動車が、轟音を立てて走り去っていく。
腰を抜かしたままの私と猫が、その自動車を見送る。
太った白黒のブチ猫。黒い顔で、鼻の下の部分だけ白くなっているのが、口髭みたいで
偉そうだ。
「あんたも、災難だったね」
私は尻餅のまま猫を抱き上げる。
そのまま、立ち上がろうとすると、その猫は地面に手を伸ばして、何やら暴れている。
よく見ると、地面にドラ焼きが落ちていた。
「これ、あんたのなの?」
ドラ焼きを拾い上げ、猫の目の前にかざすと、
―それは、俺のだ―
と言わんばかりにドラ焼きをひったくって、前足で抱え込んだ。
「あんた、ド〇え〇ん?」
そう言いながら、猫を地面に下すと、ドラ焼きを口に咥えて、どこかに走り去った。
何なのよ、もう。イーっだ。
特に恨みがあるわけではないが、猫に向かって、鼻のシワを造ってみせる。
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