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「大丈夫。怪我はなかった? 濱野さん」
不意に声をかけられ、慌てて振り向く。
そこに、自転車に乗った心配顔の三笠くんが立っていた。
えっ、ええーっ。何でここに三笠君が??
今の、見られたの?
「立てる?」
三笠くんが手を差し出す。
私はおっかなびっくり、その手を握る。
三笠くんの手の暖かさと、湿り気を感じる。
途端に顔がリンゴ色になる。顔が熱い。頭から湯気が出てるんじゃないか。
三笠くんの手を頼りに立ち上がる。
でも、とても顔を合わせられない。
「だ、大丈夫です」
と震えた声で答える。
「じゃ、じゃあ」
と、その場から逃げるように、走り出した。
「あ、ちょっと。濱野さん。濱野さん」
三笠君の呼び止める声を、聞こえないふりをして走り続ける。
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