第三章 姉妹

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 はぁ。  長女は辛い。  嫌な事があっても、下の子の前では平気な顔をしてなくちゃいけない。  泣きたい事があっても、我慢しなくちゃいけない。  下の子は良いよな。暢気でいられて。 「美寿穂。翠。オヤツよー」  階下から、お母さんの呼ぶ声。  お母さん、きっと翠が帰ってくるの待ってたんだろう。 「ハーイ」  隣の部屋から、元気な返事とともに翠が飛び出していくのが分かる。  はぁっ。  私は返事替りに、溜め息を吐き出した。  なんか、家族と顔を合わせたくない。  造り笑顔を作らなくちゃならないと思うと辛い。  机に突っ伏したまま、時間が過ぎてゆく。 「美寿穂。何してんの! 早く、おりてらっしゃい。翠はオヤツ食べちゃったよ」  もう、やだなぁ。怒られるのは、いっつも私ばっかりだ。  翠は、要領いいもんなぁ。
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