第三章 姉妹

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 冷凍室にあるはずの、私のシューアイスがない。  洋菓子屋のきれいな白い箱に入っていた筈なのに。 「お母さん。私のシューアイス知らない」 「シュークリームなら冷蔵庫に入ってるでしょ」 「そうじゃなくて、冷凍室に入れといた私のシューアイス」 「シューアイス?」  果実酒の瓶と睨めっこしていたお母さんが、顔を上げる。 「あれ、美寿穂のだったの」 「限定品だったんよ。今日たべようと思って、イチゴ味の方を残しといたのに」  どれどれと言って、お母さんが腰を上げる。  冷凍室の中身を穿り返す。 「ないねぇ。お昼には見た気がするんだけど…」  冷凍室のトレイを戻し、今度は冷蔵室のドアを開ける。  中には、ぎっちり詰め込まれた食材の数々。  その向こうに、シュークリームが四つ隠れていた。 「あー、分かった。翠が間違えて食べたんだ。シュークリームが見えなくて…」 ―えーっ。この上ない悲劇。イチゴシュー食べるのを楽しみにしてたのに。なんて日だ―  キッチンのリサイクルボックスをみると、確かにシューアイスの白い箱が捨ててある。  いくら間違えたからって、文句の一言でも言わないと腹の虫が収まらない。  そんな気持ちのまま、翠の部屋のドアを開けた。  それが、いけなかった。  そんなマイナスの気持ちのままで、翠の前に立つべきではなかったんだ。
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