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階下から、母がドタドタと上がってくる。
「なんの騒ぎなの一体」
鬼の形相の私と、大泣きしている翠の様子を見て、母が絶句する。
翠がお母さんの胸に顔を埋めて、泣き続ける。
「あなたたち、たかがオヤツくらいのことで、なに喧嘩してんの」
”あなたたち”と言いながら、母は非難の眼差しを私に向ける。
「美寿穂は、お姉ちゃんなんだから、少しは我慢しなさい。翠は間違えただけで、悪気は
ないんだから」
母が翠の髪を梳りながら、「翠は悪くないよ」と慰める。
母のその言葉が、私の胸に新たな痛みを穿つ。
「お母さんは、いつだってそうだ。翠には甘い顔して…。私には…」
「えっ…」
「お姉ちゃんだから、我慢しなさい。お姉ちゃんだから、ちゃんとしなさい。お姉ちゃん
だから! お姉ちゃんだから!!、お姉ちゃんだから!!!」
涙がほとばしる。
「『お姉ちゃんだから』なんて、もう沢山よ!」
翠を抱いている母を肩で突き飛ばして、私は翠の部屋をでる。
自分の部屋に逃げ込んで、机に突っ伏し、声を押さえて、涙を流す。
なんて酷い一日なんだろう今日は。
私は自分が嫌いだ。大嫌いだ。
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