第三章 姉妹

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 階下から、母がドタドタと上がってくる。 「なんの騒ぎなの一体」  鬼の形相の私と、大泣きしている翠の様子を見て、母が絶句する。    翠がお母さんの胸に顔を埋めて、泣き続ける。 「あなたたち、たかがオヤツくらいのことで、なに喧嘩してんの」  ”あなたたち”と言いながら、母は非難の眼差しを私に向ける。 「美寿穂は、お姉ちゃんなんだから、少しは我慢しなさい。翠は間違えただけで、悪気は ないんだから」  母が翠の髪を(くしけず)りながら、「翠は悪くないよ」と慰める。  母のその言葉が、私の胸に新たな痛みを穿つ。 「お母さんは、いつだってそうだ。翠には甘い顔して…。私には…」 「えっ…」 「お姉ちゃんだから、我慢しなさい。お姉ちゃんだから、ちゃんとしなさい。お姉ちゃん だから! お姉ちゃんだから!!、お姉ちゃんだから!!!」  涙がほとばしる。 「『お姉ちゃんだから』なんて、もう沢山よ!」  翠を抱いている母を肩で突き飛ばして、私は翠の部屋をでる。  自分の部屋に逃げ込んで、机に突っ伏し、声を押さえて、涙を流す。  なんて酷い一日なんだろう今日は。  私は自分が嫌いだ。大嫌いだ。
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