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「お姉ちゃんなんだから、ちゃんとしなさい」
十七年も長女を務めていれば、否応なく躰に染み着いたものがある。
取り乱してはいけないという思いで、私は声にならぬ嗚咽を漏らし、乾いた涙を流す。
私だって大声で泣きたいんだ。でも、泣けない。
そして、その辛さを誰も分かってくれない。
暫くたって、泣きじゃくる翠を伴って、お母さんが部屋に入ってくる。
「ごめんね。美寿穂…。怒ったりして…」
翠が涙に咽びながら、途切れ途切れに言葉を絞り出し
「ごめんなさい…。お姉ちゃん…。ごめんなさい…。お姉ちゃん…」
「美寿穂…。翠も謝ってるから、許してやってちょうだい」
まただ。
また、翠だけ特別扱い。
なんで、翠だけ保護者同伴なの?
ずるいよ。ずるいよ。
なんで、翠だけ誰かに守られてるの? いつも。
「話したくない。一人にして…」
「でもねぇ、美寿穂…」
「一人にして。だれにも会いたくない。特に、翠に」
声が大きくなる。
翠が、また幼子のように大泣きを始める。
母が、悲しそうな眼差しを残し、翠とともに部屋をでていった。
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