第四章 オンガエシ

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 人間が望むことなら、大概はできる。  それなら…、 ―私のことを好きな三笠くんを出して―  と言おうと思ったけど、止めた。  夢から醒めたあとに、余計に空しくなると思うからだ。  それじゃ… ―翠と仲直りしたい―  って…。  この願いも、なぁ。  夢の中だけ、仲直りしてもしょうがないし…。  現実の翠との仲直りは、人頼みじゃなくて、自分の力でやらなくちゃいけないし…。 「そうそう、忘れとった」  髭猫が、ベッドの上で腹を出して寝転がり、横腹を前足で掻いている。  本当にやる気あるのか、この髭猫? 「願いの数は三つじゃ。気前いいじゃろ、儂って」 ―ああ、そうですか。どうせ、夢ですからねぇ― 「それと…」 ―まだ、あるの? 夢のくせに(くど)いなぁ― 「願いの内容は猫に関係すること。これ大事なことだから」 「えーっ? 猫に関することって、どういうこと?」 「猫に関することは、猫に関することじゃよー」  と髭猫が腹這いでノビをしながら喋る。  遊んでるんじゃないの、この猫。
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