第四章 オンガエシ

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 髭猫は、全部の足を延ばして横たわっている。  両目は瞑ったままで、しっぽの先だけがピクピクと動く。  完全に眠る気でいるだろ、この猫。何しに来たんだ。 「なんでも有りにすると、あとが大変じゃからの。ふぁぁー」  と欠伸のついでに付け足した。 「その辺、はっきりしてくれないと、お願いできないんだけどなぁ」  と皮肉たっぷりに言ってみる。  どうせ聞いてないだろうけど。  すると、髭猫は私の方に顔を向けて 「それなら、願いの言葉の中にネコが入っておれば良いことにしよう。とりあえず」  と大義そうに口を動かした。 『叶えられる願いは三つ』 『お願いの言葉の中にネコが入っていること』  纏めると、こういうことね。  さっき、「人間が望むことなら大概できる」とか言ってたけど、願い言葉の中にネコを 入れるとなると、大したお願いできないじゃない。  これじゃ、さっぱり恩返しの意味なんか無いじゃないの。まったく、もう。  って、怒ってもしょうがないか。夢だから…。  そうだ。どうせ、夢なんだ。  一夜限りの、夢物語。  なんでも構わない。好き勝手なことを願おう。
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