26人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
「……ぼくは……?」
「宝物」
「…………」
「さっきの先輩じゃないけど、誰にも渡すつもりはないおれだけの宝物」
「…………」
「それじゃ、駄目かな?」
「駄目……じゃない」
おれは、ベッドに腰掛けている碧生の腕を取り、自分のほうへと引き寄せた。
「碧生……」
「……なに?」
「キス…していい?」
「……え?」
「それとも……やっぱ嫌? おれなんかとは」
「い……」
「…………」
「嫌じゃ……ない……」
碧生の口がその言葉を綴ったとたん、おれの唇は碧生の唇と重なっていた。
クチュっと喉が鳴る。
この間みたいな、勢いだけの事故のようなキスじゃない。お互いの意思で重なっているその柔らかな感触は、まるで天にも昇る心地良さで。
ほんの少し口を開き、舌を侵入させると、碧生の身体がピクリと小さく跳ねた。
「……んっ」
おもわず逃げ腰になりかけた碧生の腕をさらに引き寄せる。もちろん、こんなところで終わらせたくないからだ。
「こら、もういい加減にしろ」
でも、おれの想いなぞ、なんのその。碧生はそう言って唇を無理やり引き剥がした。
「怪我人のくせに、なにサカってんの。おとなしく寝てなさい」
言葉とは裏腹に、碧生の頬はこれ以上ないくらい赤く染まっていた。
最初のコメントを投稿しよう!