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「あの……まだ三時…ですが」
「そうだよ」
当然だとでも言わんばかりの顔をして、健先輩はすでに歯ブラシを咥えている。
確かに本日のおれの起床予定時間は早い。ぶっちゃけて言うと午前四時だ。早い…けど、まだあと一時間は先の話だ。
「なんなんすか、先輩……今日って四時出発ですよね」
「そうだな」
「だったら、おれまだ寝てられ……」
言いながら再び布団に潜り込もうとしたところ、健先輩の掌がおれの頭に飛んできた。そしてパジャマ代わりのトレーナーの襟首をつかみ、引きずりあげる。
「仕方ねえだろ。座長と瑞希からもう到着するって連絡がはいったんだよ」
「はぁ? 何のサプライズですかそれは」
布団の脇には鳴る前に止められた目覚まし時計。間違いなく針はまだ三時を指している。いくら早め早めの行動が常の人達とはいえ、さすがに出発予定の一時間も前に来たりはしないんじゃないだろうか。
「非常召集がかかったんだよ。出発前に緊急ミーティングだそうだ」
「……え?」
顔を上げると、健先輩がふだんより二割増くらい真剣な目でおれを見下ろしていた。一時間も早めに起こそうとしたのは、どうやら冗談や意地悪ではなさそうだ。
「緊急ミーティング? なんかあったんすか?」
「それがよ。九州を回ってるA班のカムパネルラが急性盲腸炎で入院したらしい。おかげで俺達のスケジュールにも大幅な変更があるんだってさ」
きゅうせいもうちょうえん?
にゅういん?
さすがにこれはいつまでも寝ぼけてはいられない事態じゃないだろうか。
おれはようやく覚醒した。
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