***(新しい仲間)***

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「大丈夫なんすか? それ」 「大丈夫じゃないから、集合がかかったんだよ」  そう言っておれの質問に答えた声は、健先輩ではなかった。  先輩よりトーンの高い柔らかい声と涼やかな口調。おれ達の班の清涼剤。瑞希さんが稽古場へ入ってきたのだ。 「あ、瑞希さん。早いですね」 「座長に電話で叩き起こされてバイク飛ばしてきたんだよ」  少し眠そうな目をして瑞希さんが首を振る。そして、まだ布団が敷かれたままの稽古場を見回して大きくため息をついた。 「やっぱり僕もこっちに泊まればよかった」  瑞希さんの家からこの劇団までは、バイクを飛ばして二〇分ほどだ。やっぱりさすがの瑞希さんでも朝の二〇分は貴重なのだろう。 「座長が来るまでちょっと寝ときます?」  おれの提案に瑞希さんは苦笑しながらおれの頭を小突いた。 「どっちかっていうと、熱いお茶でも入れてほしいかな」 「了解っす!」 「あ、さっきコンビニ前で座長とすれ違ったから、他のみんなもすぐ到着すると思う」 「ってことは六人分ですね」 「そのとおり」 「アイアイサー」  言ってる間に無事到着したのだろう、座長の運転するワゴン車のエンジン音が耳に届く。そして慌てた様子で劇団入口への階段を駆け下りてくる足音が三人分。  おれが瑞希さんに言われたとおり、六人分のお茶の支度をして稽古場へ戻ってくると、そこには、おれたちの劇団『賢治の童話館』B班のメンバーが勢ぞろいしていた。
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