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「怖いって……何? それ」
「仕方ねえじゃん。怖くて、不安で……確かめられなかったんだよ」
好きだから。
碧生と過ごした懐かしい過去の思い出が好きだから。
だから。
もし違ってたらと思うと、不安で。
いや、正確に言うと、違ってなくて、賢治は本当に碧生で間違いなくて、でもその上で碧生がおれのことを覚えてなかったらどうしようって。
おれのことなんかなんとも思ってなくて。記憶に残すような相手じゃなくて。
おれの不用意な勘繰りや思い込みで、何かが壊れてしまったらどうしようかって。そう思って。
駄目だ。言いたいことがうまくまとまらない。
「ただ……これだけは嘘じゃない。おれ…お前にすんげえ逢いたかった」
確かめるのが、こんなにまで怖いと思うほど。
どうしようもなく不安になっちまうほど。
「逢いたかったんだ」
碧生の目が大きく見開かれる。
「やっと叶った。やっと逢えた」
「…………」
「やっと逢えた。碧生」
「…………」
「碧生だ。本物の碧生だ」
「……何を……いまさら」
とうとう呆れたようにふっと息を吐き、碧生が微かに笑った。
笑ってくれた。
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