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***(永遠に敵わない人)***
翌朝は七時に出発の予定だった。
今夜の宿も同じホテルなので、チェックアウトはせずにそのまま車に集合。朝食は途中のコンビニで買い込んで、食べながら学校へ向かうことになる。
先週までの四時起きに比べたら随分とぬるい起床時間だったから油断したのと、昨夜の衝撃と興奮が冷めなくて全然寝付けなかったのとで、おれが起きたのはなんと出発の十分前だった。
「なんで起こしてくんないんだよ、碧生!」
「だって、君が支度にどれくらい時間かかるのかわかんないし……それに……」
すでに支度を終えていた碧生は困ったようにうつむいた。
「何度か、声…かけようと思ったんだけど……タイミングがなかったっていうか……」
タイミングって。なんだよ、それは。
「と…とりあえずぼく、先に行ってるね。爽平もすぐ来るって言っとくから」
慌てた様子で碧生は立ち上がり、さっとドアを開けた。
……ところで立ち止まり、振り返ると緊張した面持ちですうっと息を吸い込んだ。そしてひとこと。
「お…おはようございます。爽平」
「……!!」
ボッとおれの頬が火をつけたように熱くなった。すでに碧生はバタンとドアを閉めて行ってしまっている。
うわー。なんだ今の。
残されたおれは呆けたようにベッドの上で固まった。
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