手鏡

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それから先輩からのLINEも切れず、喜ぶ私に例の不審者は何故か不機嫌そうにしていた。そして土曜の夜を迎える。今夜はサークルの飲み会だ。あっという間に時間は過ぎて、殆どの人が二次会まで流れた。私は歩いて帰れる距離だったし、当然参加。 ポツポツと雨が降り始めたのも構わず移動していると、 「みまりー」 ポン、と肩を叩かれた。 「柳内先輩!」 「今日、ずっと話したかったのに、席遠かったねぇ」 先輩の言葉に心臓が大きく跳ねる。 あはは、と子供みたく笑う先輩は、確実に酔っている。 何より、下の名前で呼ばれたのなんか初めてで。 流れで席まで隣になり、 「みまりは、飲まないの?」 「飲まないですよ、19ですから」 「ちぇー」 終始こんな感じの先輩に、他の先輩たちが煽りに煽る。それもヘラヘラかわす先輩に感心しつつも、夢のような状況に段々気分がほわほわとして--だから、油断してたんだ。 気づけば二次会も終わっていた。もう零時を回っていて雨足は強まっていた。私は一人、家の方面に向かいしばらくしたところで、冷たく腕を引かれた。 「やない、せんぱい?」 さっきまでの酔った雰囲気とは変わって、いつも通りの綺麗な笑みを浮かべた先輩が立っていた。 何故か、無性に怖い。 「このまま帰るの?」 「え、」 グッと握る力が強まる。 あ、ヤバい。そう直感した。 ほわほわした気持ちが一気に冷めて、私の理性も感情も叫んでいた。 逃げて、今すぐ。 痛いほど掴まれた腕が、それを許さない。 「ね? ミマリもそう思ってる」 言葉の響き方が、違う。何か、人をぞっとさせる、 悪魔のような……。 「や、離して」 やだ、たすけて。 お願い、カミサマ……! 雷鳴が轟いた。 天からの怒槌が落ちた、そう感じさせるような。 「また、貴様がそれに触れるか、ケガレのついた獣」
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