手鏡

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おばあちゃんは言ってた。 畳の上に、きちりと膝を揃えて、伏せられた手鏡の前に座りながら。 「水毬、この鏡はとっても大切なものなの」 赤子を慈しむような顔で。 「かみさんが……」 でもそれは柔らかな日差しの降り注ぐ、穏やかな午後のことで、 「ーーだからね、もし水毬に困ったことがあったら、これに向かって、」 寝転んでいた幼い私は、温かな陽だまりの微睡みの中に、おばあちゃんの言葉、その節々を忘れてきてしまったのですーー
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