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そんな二人が20年振りに顔を合わせ、
暫しの沈黙を破ってやっと京が口を開いた。
すると豊子は、吸っていた煙草を灰皿で圧し潰し、
「いきなり何を言うかと思えば、他に言う言葉はないのかね、いいかい? 今
は昔と違ってね、こっちが黙ってても、どうぞお使いくださいって、向こう
が勝手に持って来るんだよ。ご丁寧に頭まで下げてだ。だからそんな言い掛
かり、これっぽっちだって言われる筋合いないんだよ!」
忌々しそうにそう言って、勢い良くソファから立ち上がった。
真っ赤なワンピースを着込み、しっかりと化粧を施している彼女は、
一見40代後半くらいに見えないこともない。
しかし実際は還暦をとうに過ぎて、
更に10年以上が経っている筈だった。
若々しい顔の下にある喉元には、
相応の年齢を思わせる皺筋が連なっている。
豊子は軽く咳払いをして、ゆっくり京の立つ窓際へ近付いていった。
彼の斜めすぐうしろ、己の吐息が届きそうな位置に立ち、
「あの日、あのままここに残っていれば、もうとっくにあんたがここを継いで
いただろうに……。でもまあいい、とにかく戻って来たんだ。これからは、
ちゃんとわたしの言うことを聞いて、しっかりと精進しておくれよ」
そう力強く声にして、京の視線と同じ方向に目を向けた。
東京ドーム二つ分の敷地の中には、
まだまだ建設途中のところが幾つもあった。
しかし後ひと月あれば、どれもこれも予定通り完成に漕ぎ着けるだろう。
豊子自身、50年前生きる為に始めた占いが、
ここまでのことになるとはまるで思ってもいなかった。
――ここが完成し、後は、京がわたしの跡を継いでくれれば……。
豊子が切望するそんな未来の為にも、今日の客人を逃すわけにはいかない。
ここ本殿が完成して、初めて大物信者候補が訪れるのだ。
教団の長い歴史の中で、
彼こそが最も日本国に対する力を有している人物だろう。
そんな男が、あと一時間もすればこの本殿にやってくる。
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