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――なんとも胡散臭い……
ここまできて、デタラメだったら、ただじゃおかんぞ!
ふと、そんなことを思った瞬間だ。
いきなりの暗転。
――え!
驚いて立ち上がろうとした途端、突然和太鼓の音が鳴り響いた。
立ち上がって辺りに目をやると、いつの間に現れたのか、
火の付いた松明が部屋の端々に置かれている。
その炎が揺らめく度に、幾重にも重なる光が、
頭上遠くにある天井を不気味に揺らし、照らし出した。
そして、いったいどこから聞こえてくるのか?
かなりの数であろう和太鼓の一糸乱れぬ打音に、
まるでその部屋全体が揺れているようにさえ感じるのだ。
いったい何が起きるのか?
そんな男の思念が届いたかのように、
突然フッと音が止み、不意にしわがれた声が耳元で響く。
「お待たせ、致しました……」
思わず振り返る男の眼前に、炎に照らされた豊子の顔が浮かび上がった。
「さあ、今一度……お座りください……」
豊子の手が両肩に置かれて、男はほんの少しだけその力を身体に感じた。
そして次の瞬間、さっきまで感じていた疑念が一気に消え去り、
――こいつ、ホンモノ……。
そんな微かな思念だけを残して、
彼の思考のすべては豊子のものへと成り果てた。
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