#2 美しい彼女の行く末は

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  #2 美しい彼女の行く末は

 カラタチ町の商店街にはアーケードがあって、その入り口の上部には大きなステンドグラスが飾られている。  ということを私が初めて知ったのは、この町に生まれ育って十六年と六か月が経ったある冬の日のことだった。なぜそれまで気が付かなかったかというと、私は大抵、俯いて歩いているからで、なぜその日に気が付いたかというと特に理由はなくて、なんだかお日様の光が気持ちいいなあと思って空を見上げたら偶然目に入ったからだった。  そんなわけで、商店街の入り口に立ってぼーっと天井を見上げていた私は、 「イサミちゃん?」  と声をかけられるまでミサキさんがそばにいることに気が付かなかった。  ミサキさんはよく行くお店でアルバイトをしている大学生で、最近仲良くなった。私たちはとめどなくお喋りしながらお互いの買い物に付き合って……いや、見栄を張るのはやめよう。  高校生にもなってこんなことをいうのはどうかと思うけど、普段喋り慣れていない人と偶然会うと、私はどうしたらいいかわからなくなる。特に、世間話というのがどうも苦手だ。先日も本屋で「会話に困らない世間話のネタ」という本を買うかどうか真剣に悩んだくらいだ。     
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