15 愛した証拠

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 半年後、招待状を持って公爵家を訪れ、そこで聞かされたのは、自分のほかにも三名の花嫁候補がいて、彼女らとともにディーン侯爵と地下で一週間、生活を共にし、ディーン侯爵が自身の花嫁として相応しいのは誰かを見極める、というものだった。  約束を果たしたいという彼の言葉に反する状況に少しの失望を感じたが、相手は次期公爵だ。それくらいのことは仕方ないと覚悟を決めて、共同生活に臨んだ。  そしてこの一週間、ミナリアの侮蔑の目に耐えながらも、彼はきっと約束を守ってくれると信じて、自分にできる精一杯のことをしたつもりだった。  しかし、その結果訪れたのは、誰とも結婚する気は無いという宣告――。  しかも彼は、私たちを地下に残して、人魚の女と密会までしていたらしい。  ――約束を裏切られ、自分は用済み。  ――家に帰っても、待っているのは没落貴族としての破滅のみ。  そこで、全てがどうでもよくなった。  とはいえ、ここではまだ、自殺を考える程度だった。  だが、ディーンの不貞によってそんな感情を抱いたのは、どうやら自分だけではないことに気付く。  ターニャの不穏な呟きが気になり、メリッサは自身の眼に宿る力で、ターニャの一日後までの未来を見た。  すると彼女は。彼への復讐の意味を込めた自殺を、明日の朝四時四十四分丁度に行うことがわかった。  具体的な時間が分かったのは、部屋には魔法の時計が設置されているからだ。     
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