15 愛した証拠

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 右手の薬指をナイフで切断し、農作業などで用いるために習得していた〈風の揺り篭〉で、彼女を天井から吊るしたシーツに首をかけさせた。そして、現場の状況をターニャの自殺の現場に酷似するように整えた。  次に、また時間を見計らって地上へと向かって、見張りの二人と話している間にターニャが自殺したことを確認した。そして、地下へと降りていったアダムを追いかけ、自分がディーンのもとへ向かうと説得し、ディーンの部屋へと向かった。  ここで、唯一の誤算が発生した。彼は、既に起きていた。  考えてみれば当然だ。明朝に人魚を呼んだ人間がまだ寝ている可能性のほうが低かったのだ。  しかし、あまり悠長なこともしていられない。本当は寝込みを襲うつもりだったが、計画を変更し、会話で油断させつつ、彼を背後から襲うことにした。彼は目が見えないから、それも可能だろうと踏んだのだ。  そして、部屋の中に入って、彼と会話をした。  あんなことがあったにも関わらず、彼はどこか楽しげに話していて、それが逆にメリッサの神経を逆撫でした。  それとなく背後へと回って機械を伺い続けるが、しかし、彼は目が見えないのに、なかなか隙を見せなかった。目が見えないからこそ、そういった感覚に敏かったのかもしれない。     
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