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今後あれは、この私の後を継いで、公爵家の当主としてこの世界を生き抜いていかねばならない。そのとき、これまで親交のあった貴族の令嬢を差し置いて、いきなりどこの馬の骨とも知れない、没落貴族の令嬢と結ばれた公爵という肩書は、必ず不利に働く材料となるだろう。それを可能な限り回避する、あるいは軽減するために、あれはこんな周りくどい方法をわざわざ取ったのだ。
……メリッサ、お前をこの四人の中に参加させ、まったくのいきなりな婚姻ではなく、こういった背景があったうえで結ばれたのだと、他の貴族たちに認識させるため。それと同時に、同じ条件で見際めを受け、その上で自分の娘が選ばれなかったのであれば、それは彼らからしてみれば、自分の娘の失態、ということになるからだ」
――そうか、夕食を共にしたときの『身分や立場で人を判断しないのは自分譲りの美点だが、自分の息子がいざそれを実践するとなると、少々複雑』というのは、このことを指しての言葉だったのだ。
イマジカが違和感を感じていたようだったが、今ならわかる。
確かにこの言い回しは、最初から没落貴族の令嬢であるメリッサを選ぶとわかった上でなければ出ない言い回しだろう。
「昨日『誰とも結ばれるつもりは無い』と言ったのは、メリッサ、きみ以外の者たちに自分のことをきっぱりとあきらめてもらうための方便だったのだろう。そこまでのことを言っておけば、後腐れなく自分を忘れることができる、とでも思ったのかもしれん。そしてメリッサにはあとから、本当のことを告げるつもりだったはずだ」
それを聞いたメリッサはただ、狼狽えた。
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