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真実を、受け入れられていない様子だ。
「そんな……じゃあ、私は、勘違いして、彼を……? そんな、嘘よ……。ぜんぶ、あなたたちのでまかせだわ……!」
そう思いでもしなければ、耐えられないのだろう。
……だが、残酷にも――、「愛の証拠」は、形に残っていた。
マリーが、それを示した。
「いいえ。本当のことです。その証拠に――、指輪のリングには、貴女の名前が彫ってあります。……昨日私が受けた相談は、そのことだったんですから」
そういわれるや否や、メリッサが指輪を箱から取り出して、リングに目をやる。
そして、動きを止め――、目から、大粒の涙を零し始めた。
「ごめん……なさい……ごめん、なさい…………ごめんなさい…………っ!!」
それから彼女は、ずっと泣き続けた。
彼女が兵士たちに連れられていき、その姿が見えなくなるまで、彼女はずっと泣き続けていた。
そこには書いてあったのだろう。
ディーン侯爵が依頼したという、メリッサの名前が。
――彼女がこんな事件を引き起こす前に、あの指輪を渡していたら、結果は違っていたのだろうか。
永遠の愛を約束するという人魚の指輪。その効果が本物かどうかは、まだそれが手渡される前だったから、わからないままだ。
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