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「そりゃあ、もしそんな秘密があったとしたら、そのタイミングで、イマジカに伝え――」
あれ……。
そうだ。確かにおかしい。
「なんでディーン侯爵は、メリッサが部屋に来たとき、本当のことを伝えなかったんだ……?」
絶対に、俺ならそこで伝える。
「そうよね。おかしいわよね。それに、いくら目が見えなくて不意を突かれたからって、男のディーン侯爵が女のメリッサちゃんにそのまま殺されちゃうって、あり得るのかしら。あなたたちが見た侯爵は、そんなにひ弱な感じだったの?」
「いや……」
少なくとも、そんなふうには見えなかった。
「メリッサちゃんが言うには、首を絞める前、ディーン侯爵が何かを言いかけたときから、不思議な歌――つまり〈人魚の歌〉が聞こえてたのよね? ……その歌は、なんのための歌だったのかしら?」
……そうだ、確かに、朝方にほんの十五秒程度聞こえた人魚の歌。
マリーは、一連の事件の犯人ではなかった。では一体、
(何のために、マリーはあの歌を歌ったんだ――)
……いや、彼女は言ってたはずだ。
侯爵に、気づいてもらうために歌ったのだと。
だけど――
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