16 人魚の歌声

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「そりゃあ、もしそんな秘密があったとしたら、そのタイミングで、イマジカに伝え――」  あれ……。  そうだ。確かにおかしい。 「なんでディーン侯爵は、メリッサが部屋に来たとき、本当のことを伝えなかったんだ……?」  絶対に、俺ならそこで伝える。 「そうよね。おかしいわよね。それに、いくら目が見えなくて不意を突かれたからって、男のディーン侯爵が女のメリッサちゃんにそのまま殺されちゃうって、あり得るのかしら。あなたたちが見た侯爵は、そんなにひ弱な感じだったの?」 「いや……」  少なくとも、そんなふうには見えなかった。 「メリッサちゃんが言うには、首を絞める前、ディーン侯爵が何かを言いかけたときから、不思議な歌――つまり〈人魚の歌〉が聞こえてたのよね? ……その歌は、なんのための歌だったのかしら?」  ……そうだ、確かに、朝方にほんの十五秒程度聞こえた人魚の歌。  マリーは、一連の事件の犯人ではなかった。では一体、 (何のために、マリーはあの歌を歌ったんだ――)  ……いや、彼女は言ってたはずだ。  侯爵に、気づいてもらうために歌ったのだと。  だけど――     
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