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「そうよね、おかしいのよ。それが、ディーン侯爵が『昨日のこと』を話しかけた丁度その時だったなんて、あまりにもタイミングがよすぎる。その間、ディーン侯爵が言葉を続けず、しかも無抵抗になるなんて、あまりにも都合がよすぎるわよね……?」
背筋を、冷たいものが走った。
「まさか……、いや、でも、どうやってマリーは――」
「大広間にいたマリーちゃんが、一体どうやって、ディーン侯爵の部屋の会話を把握できたのか――」
王女は俺の考えなど全てお見通しというように、そう言葉を継ぐ。
「――呪術師の作った〈盗人の手鏡〉は全部で三つだった。一つは呪術師が持っていて、残り二枚は既に買い取られていた。そのうちの一枚は、ターニャちゃんが持っていて――、じゃあ、 あ と 一 枚 は 、 ど こ に あ る の か し ら ね ?」
なっ……!?
「まさか――!?」
俺が顔を向けると、イマジカは罰が悪そうに顔を背ける。
そんなイマジカに、王女が優しく問う。
「ねえ、イマジカ。――大広間で、あなたはそれを見つけたんでしょ?」
その言葉に肩を震わせ、そして、イマジカは黙って鞄を開け、その中から、何かを取り出した。
それは……
「〈盗人の手鏡〉……」
呪術師とターニャのそれは、事件の証拠品としてヴィスタリア公爵の私兵団の預かりとなっている。つまりここにあるのは、残るもう一つの手鏡だ。
「それを、大広間で……?」
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