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マリーが違法呪具を所持していて、彼女にそんなつもりはなかったかもしれないが、少なくとも、彼女の歌がディーン侯爵の死の一因となったことは紛れもない事実だろう。
――それを、ヴィスタリア公爵が知ったとしたらどうなる?
……それは、そうなってみないとわからない。
だが、イマジカはきっと、こう考えたのだろう。
もし、それが原因で、ヴィスタリア公爵が亜人を憎むようになったら、と。
そうなれば公爵は、王女との協力関係を解消するだろう。
公爵は今や、王女派の筆頭だ。そんなことになったら、王女派は大きな打撃を受ける。
そして、王女が推し進める「亜人差別の撤廃」については、完全にとん挫することになるだろう。
――万が一にもそんなことにならないために、イマジカはマリーを見逃したのだ。
(……イマジカ……お前は本当に、『王女のための探偵』なんだな……)
そこで、王女が立ち上がって、イマジカに手を差し出した。
そして、その美貌の笑みと共に、こう言った。
「イマジカ、踊りましょう」
イマジカは逡巡するが――、
「喜んで」
立ち上がり、その手を取ってキスをする。
そして二人は、ゆっくりと、互いに身を寄せ、離して、また寄せて――、時には廻って――
二人は、踊り始めた。
(あぁ……、なるほどね)
俺はそれを見て、ようやく理解した。
――探偵は、王女と踊る。
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