4 火葬の理由

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 振り向けば、館の家令である老紳士がいた。 「ささ、場所は館の近くにある火葬場です。が、その前に……」  彼は、私たち――特にセニス――の姿を上から下まで眺めて、続ける。 「お二人は少しお召し物が汚れていらっしゃいますから、まずは館でお着替えになったほうが宜しいでしょう」  口調は柔らかだが、目が笑っていない。  ……まあ、当然だよね。 「あ、はい……」 「す、すぐに支度します……」  私たちは、急いで館に向かった。  途中、一瞬後ろを振り向いたけれど、そのときにはもう、あの女性の姿は見えなくなっていた。  * * *  館で襟の詰まった綺麗な服に着替えた後、家令に急かされつつ連れられたのは、先ほど彼が言っていた通り、館の近くにある火葬場だった。  火葬場といっても、基本的には大きな穴が掘られているだけの場所だ。  そこに死者の(ひつぎ)が並べられて、その上に薪などの燃料がくべられている。  すぐ近くでは大きな焚き火がなされていて、火葬が始まると、司祭、領主、親族親類、その他参列者の順で、その火を小さな木の棒に移して、大穴の中に投げ入れていくのだ。     
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