4 火葬の理由

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 火葬場には既に大勢の人たちが集まっていて、その奥には、教会司祭らしき老人。それに、黒の服に身を包んだヴィスタリア公爵。そしてその嫡男である、杖を持った美男子、ディーン・ヴィスタリア侯爵の姿もある。  もちろん、公爵が存命である以上ディーン侯爵の爵位は儀礼称号ではあるが、彼もまた父に勝るとも劣らない傑物(けつぶつ)であるとして、既に社交界では有名らしい。 (そういえば昼間は、姿を見なかったなぁ……)  そんなに長居したわけでもなかったけど、そもそも公爵とやりとりしたあの場に、侯爵がいたとしてもおかしくなかった。というかいない方が不自然な気がするのだが……、外せない用事があったり、どこかへ出ていたりしたのだろうか。  そんなことを考えている間に、公爵がこちらに気付いた。 「おっと、今日の主賓が到着したようだ。さあ、イマジカくんとセニスくん、こちらへ」  招かれるまま公爵の下へ行くと、彼は一歩下がり、声を張る。 「さあ。一通りの儀礼は済み、本来なら、残るは柩に火をくべるのみだが……今日はその前に、この二人を紹介させて欲しい」  集まった人々の視線が、私たちに向く。 「イマジカ・アウフヘーベン。そしてセニス・インベント。二人は、諸君らの大事な者たちを奪った呪具、それを作り出した張本人である、呪術師ヴェンディ確保の立役者だ」     
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