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公爵の紹介に、人々は「あの呪術師を捕らえたのか」とか「お母さんもこれで安心していける……」とか「ありがたや……」とか呟きながら、とりあえずは総じて好意的な視線を向けてくれる。
「本来であれば司祭の次は領主である私が火をくべるのだが、今回はその前に、この二人から、火をくべてもらおうと思う。異論はあるかな?」
当然、というように、反対の声は上がらない。
まあ、領主相手にそんな声があげられるはずもないんだけど、恐らくは心から了承してくれているのだろうことが、彼らの表情からわかった。
「――うむ。では、火葬をはじめよう」
公爵はそう言うと、司祭に目配せする。司祭はゆるやかに頷き、赤々と燃える焚き火の中に、近くに並べられた木の棒から手ごろなものを手にとって火を移し、小さく祈りを捧げたあと、大穴にその木の棒を放る。そして、角盥の油を匙で掬って、大穴に撒く。
大穴には最初からある程度油が撒かれているので、木の棒の火はすぐに、大穴に燃え広がっていった。
「さあ、二人にもお願いしたい」
公爵が、私たちに次の火くべ役を促す。
本来であれば公爵の前に火をくべるなど恐れ多いが、他ならぬ公爵自身がそういうのだから、断る理由もないだろう。
「では、失礼します」
私たちは、司祭に習い、大穴に火をくべた。
更に勢いを増した大穴の炎がじんわりと肌を焼く。
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