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そう思うと、多少気が楽になった。
……努力なら、どれだけでもできる自信がある。でも、その方向が正しいかどうかさえわからないのは、やはり辛い。
「つまり、私の一勝も近いってことですね!」
久々に自身の成長を感じられたことで少し調子に乗ってみるが、
「うーん。それはまだまだかかるな」
即座に現実に引き戻される。
セニスは、おべっかを使うのが苦手なのだ。
彼がそういうなら、本当にまだまだかかるのだろう。
天を仰げば、三日月は変わらず、欠けたままでそこにある。
(はは、先は長いなぁ……)
これ以上この話題を続けるとまた落ち込みそうだ。
「ところで、さっきの公爵のお話し、どう思いました?」
急な話題の転換にセニスは一瞬沈思して、
「……ああ、『ディーン侯爵の花嫁探し』か」
私の指した話題に思い至ったようだ。
「ですです。今も地下で、皆さん共同生活をされているんですよね……」
「公爵が言うには、ディーン侯爵自身が提案したらしいし……、まあ、別にいいんじゃないか? 次期公爵として、それに相応しい相手をしっかり見極められる環境で探したいんだろう」
私たちは火葬式のあと、公爵と夕食を共にした。
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