5 月夜の特訓

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 そこで、昼の報告の場に続いて夕食の場にもディーン侯爵が顔を出せないことを公爵が詫びた流れで、ディーン侯爵が現在、館の地下に侯爵自らが選んだ貴族令嬢四名を招いて、一週間の共同生活を行う中で、花嫁の見極めを行っているのだということを聞いた。  今日が、その六日目だったらしい。  その令嬢の中には、なんと没落貴族の令嬢もいるという。  公爵曰く、『争いを好まず、身分や立場で人を判断しないところは自分譲りの美点だが、いざ一人息子がそれを実践するとなると、一人の子の親としては、今後の苦労を考えると少々複雑』なのだという。  やはり、相手の立場も相応の身分であるほうが色々と苦労しないのは間違いないだろうから、そう思ってしまうのは無理もないだろう。  それでも、『息子が今回の見極めで選んだ相手であれば、誰であろうと祝福するつもりだし、私自身も、もともと政略結婚などさせないつもりだった。しっかりと、あれの目になってくれる人物でなければならないのだから』  ――というようなことを、公爵は夕食中ずっと愚痴っていた。  その時は、まあ、心中お察しするというか、すごい世界もあったものだな……と、まるで別世界の話しを聞かされているような感覚にすら陥っていたんだけど―― 「……なんか、不自然じゃないですか?」  今思い返してみると、どことなく、違和感を覚える。 「ん、何が?」 「いや……うーん。自分でも何が不自然なのか、はっきりと言語化はできないんですが……」     
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