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「なんだそれ。あまりに違う世界のこと過ぎて、嫉妬でもしてるのか?」
「なっ、ちがっ……! そもそも、あの共同生活には、そういった浮かれた意味はないはずで…………はぁ……。まあ、私が穿ちすぎなのかもしれませんが」
「ん……? あー、まあ、職業柄、なんにでも裏を見出そうとするところはあるよな」
「え。……そう見えます?」
本当にそうなら、ある程度は仕方がないとしても、せめてセニス以外の前ではそう思われないようにしないと……。
「まあ、なくはない、程度だけどな」
「うーん。でも、気を付けます」
「ああ、あと」
なになに、まだ何かあるの。
「さっき、門から泣きながら出て行った女……、あれは多分、その貴族令嬢のうちの一人だよな」
……ああ、なるほど。そのことね。
「そうですね。それは、恐らくそうだと思います」
公爵からディーン侯爵の花嫁探しのことを聞いたとき、真っ先にそのことに思い至ったものの、公爵にそれを伝えるかどうか、二人で一瞬目配せして、お互いに首を振って、その場では言及しないことになった。
彼らの問題を、私たちの勝手な推測だけで公爵に告げるのは、あまりいい結果にはならない気がしたからだ。
「何かあったんでしょうね……」
「だろうな」
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