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3 少女は歌う
「助けて頂いて、本当にありがとうございます……!」
少女の、深い海の底ような藍色の髪がふわりと宙を舞う。
――繁華街、「人魚の通り道」に軒を構える食堂、「三枚の貝殻亭」の外。
騒ぎを聞きつけて飛び出したその場所では、叫び声の通り、人攫いと思しき人物たちが、一人の少女に猿轡をし、その両手を縛って肩に担いで誘拐しようとしていた。
人通りの多いこの通りであれば、ターゲットが声を上げて助けさえ求めなければ逆に露見しづらいだろうという判断だったのかもしれない。だが、少女が背後から猿轡をされるところを露天商が偶然に見ており、助けを求めたようだ。人攫いたちからすれば運が悪く、こちらにとっては運が良かった。
私が真っ先に、身体強化の魔法を用いて人攫いの肩から少女を救い出し、その後、ものの数十秒で、人攫いたちはセニスによって鎮圧された。
彼らは全員気を失って路上に倒れていて、今はセニスが一人ずつ手首を縄で縛っている段階だ。
そして、私が救出した少女は、猿轡を外してあげた途端、礼を言いつつ目の前で頭を下げた。
「私、マリーって言います。お二人とも、お強いんですね……!」
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