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4 火葬の理由
すっかり日が落ち、街には魔法の光が灯り始めている。
街に張り巡らされた水路がその光を淡く反射している様は、かくも幻想的だ。
そして私たちは、そんな情緒あふれる水の都の街を、公爵家の館に向けて、全速力で走っていた。
その理由は――、
「なんでセニスくんが水路に落ちるんですか!? そのせいで、火葬式に間に合わなくなりそうじゃないですか!!」
そう。私に注意を促したあと、次の曲がり道で、あろうことかセニス自身が水路に落ちたのだ。
「悪かったって何度も言ってるだろ! それに狼男は、肉の匂いに目がないんだよ! 見ただろ、あの露店に吊るしてあったうまそうな肉! どうしても目で追っちまうんだよ!」
「そんなこと言って、本当は綺麗な女性にでも目を奪われていたんじゃないですか?」
「んなわけ……つーか仮にそうだとしても、もし目が奪われるほどの美人ならそれはそれで仕方ないだろ!」
「た、確かに……? って、それはつまり、常に隣を歩いているはずの私には、目を奪われないってことですよね!? 失礼な人だな!」
「さっきから何言ってんだお前は!? いいからもっとはやく走れ! 置いてくぞ!」
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