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5 月夜の特訓
館の裏庭で、私は剣を握っていた。
踏み込み、前へ。と同時に――、振り下ろすッ!
――が、
(っ――!?)
渾身の振り下ろしはいとも容易くいなされ、体勢を崩される。
手をつき、転びかける体をなんとか起こそうとしたところで――
刃の切っ先が、喉もとに突きつけられる。
月明かりに照らされた刃の鋭さに、ごくりと喉が鳴る。
そして、私に剣を突きつける男――セニスが、嫌みったらしい笑みとともに言った。
「さて、これで今日も俺のストレート勝ちだ。ギャフンと言わせられなくて残念だったな」
(くううぅっ……)
一度は唇をかみ締めるも、結局悔しさは抑えきれずに口に出る。
「うあーーっ! もう! 結局今日も、一本も取れなかった……」
大の字になって、地面に寝転ぶ。
夜空には、綺麗な三日月がその身を横たえていた。
「まあ――」言いながら、セニスは横にちょこんと座る。「今日は、ひやっとさせられた場面も何度かあったけどな」
「えっ……、本当ですか?」
「まあな。さっきの振り下ろしも、タイミング的にも威力的にも、正直いなしきれないかと思った」
セニスは、おべっかが苦手なタイプだ。
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