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 帯封を外した100万円の札束を、寿々香(すずか)は天井へ向かって投げつけた。  紙幣は寿々香の手を離れた直後から噴水のように飛散した。 「もう一丁!」  結莉(ゆり)が新しい札束から帯封を外し、寿々香に手渡す。寿々香はそれを当然のようにまた天井へと投げつけた。「おりゃあ!」  結莉の足下にあるダンボールには、100万円の札束が隙間なく詰められていた。それは工場から送られてきた状態の箱入りのお菓子のように整然としていた。 「まだまだ!」寿々香が右手を差し出すと、帯封を外した新しい札束が乗せられた。力いっぱい投げつけると、100枚の紙幣があたりに舞った。  もっともっと、となぜか二人はヒートアップする。その空間すべてを一万円札で埋め尽くしたいという狂気じみた衝動にかられ、二人は息の合ったコンビネーションで紙幣をまき続けた。  バム、という鈍い音が天井からこぼれた。いたずら心を起こした結莉が、帯封をわざと残したままの札束を渡したため、寿々香が投げた札束は「かたまり」のまま天井に激突したのだ。 「おいおい!」天井から垂直に落下した札束があまりにも滑稽で、寿々香は笑いながら声を上げた。 「投げたよ!」いたずらが成功した喜びで、結莉は座り込んで笑い出した。  まだ舞っていた一万円札が、紙吹雪のように結莉に降り注ぐ。その表情はとてもまぶしそうだ。 「いいなぁ……私も!」  寿々香はダンボールから札束を掴むと、帯封を外して自分の頭上中心に投げた。そして素早く仰向けで大の字になった。 「永遠に降り注ぎたまえ」紙幣吹雪を全身で浴びながら冗談っぽく言う寿々香に向け、結莉が新しい吹雪を次から次へと発生させる。  やがて寿々香の全身は、一万円札に覆われていった。かろうじて顔の一部だけが見えている。結莉は新しい札束をマイクに見立てて縦に握り、寿々香の口に近づけた。 「寿々香さん、今のお気持ちは?」 「地下アイドルなのに、4億円もらってすいません!」 「すいませーん」結莉も調子を合わせると、二人して同じタイミングで大笑いした。
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