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夏が……来てしまった
早くプールに行こうぜとかが聞きたく無い
僕は夏が嫌いだ。
だが、窓からは元気な子供達の声が響いてしまう
くそっ……これならマンションに住みたかったな。
なんて後悔をしてると、窓から強風が入る。
部屋の書類、教科書類が揺れた。
壁のポスターは動かない。
だおっ
そう、大きく書かれたポスターだ。
部屋に貼ってあるのに理由なんて無く、ただ隙間を埋めるためだけだ。
だからポスターの女優にキスなんてする訳が無いし
だおっ の文字をダサいともかっこいい とも思わない
それにしても窓からは騒々しい街の一部が見える。
暑い中、ワイシャツを汗びっしょりにして歩くサラリーマン。子供を叱りながら、呆れる女性。
そして、暴走する原動機付自転車。
我が街らしい一部だと小さく微笑んだ。
セミの鳴き声も良く響く。この変わった鳴き声は
クマゼミだろう。珍しいじゃないか。
恋がしたい。今は恋がしたくていっばいだ。
勿論恋はしてる。相手は上の学年の女性である。
名を「碧乃真季」と言う。
小学校高学年ぐらいの時には胸の大きさでからかわれたりしたらしい。
そんな事もあってか学年では四番目ぐらいに胸が大きいと同部屋人が噂していた。
僕はその噂になんだか腹が立って、すごく怒ってしまった事がある。
それから僕が真季を好きじゃないのか?との噂が広まってしまった。
なので好きだけど恋では無いのだ。恋してはいけないの。
しかし、真季は高校三年である。高校最後の夏なのだ。戯言になるかもしれないけど、伝えたい。
さようなら と。
ああ、またポスターが目に入ってしまった。
それにしてもこの だおっ てキャッチコピーには無駄が無い。無さすぎる。
もっとこう……無かったのか【だおっ?】とか
あ、
そう言えば真季は水着が好きだっけ。
真季を誘ってみようかな。海に……
でも、知悉な男がついてきちゃうかもな。
そしたらそれでいっかもね。
このポスターのキャッチコピーみたいにさ
僕の青春に "!" は似合わないからさ。
いっぱい使ってやるんだ。
だおっ
てね。
僕はその日、やっと夏が来て良かったと感じるのだった。
〈 おわり〉
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