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 今でも彼の正確な年齢は分からない。三十代半ばにはなっているはずだった。  喫茶店に差し込む午後の光の中でも、よく見れば目元にしわができていたし、陰影はかえってこけた頬を浮き彫りにしていた――そこまで見えて、首を振る。当たり前だ。あの南の日差しにさらされたら、誰だってくたびれてしまう。  目の前にいるOは清潔な衣服に身を包み、髪を撫でつけている。もともと大人しい顔立ちの彼から当時の姿なんて、想像もつかないほど。  だが、滝沢はOが分かった。顔立ちでさえ、平時の穏やかなものに変化しているというのに。  後藤が死んだ時、まだ二十五になったばかりだったいうことに驚いた。人を殺めてしまい、流れてきたのだという。隊の中でも存在感があった。
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