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 点呼の際に、Oがいない。同僚たちに訊ねると、嘲笑とまではいかないが、苦笑と呆れ混じりに答えた。 「あいつならさっきアメリカ兵とよろしくやっとったわ、後藤が死んでからもようやる」 「若いのが好きなんだろ。今頃あのアメちゃんにつきあげられてよがってるよ」  滝沢は溜息をついて、Oを探しに出た。放っておいても、誰かに任せてもよかったが、散歩がてら迎えに行くことにした。  が、海岸を少しも歩かない内に獣じみた声がすぐに聞こえてきて、後悔したが引き返すわけにもいかず、負けたみたいなので、滝沢は大きな足音を出そうとした。しかし、波の音にかき消された。声はよく通るのに。
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