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「あいつ、おれに声をかける前に、包茎手術してもらったんだって。アメちゃんの中にもそういうかわいいところがあんだよなあ」
「タダでやってくれるからだろ」
素直可愛がっているのに、ついつい口を挟んだ。それは一昨日、彼らの軍医から聞いた話だった。
滝沢はこれでも将校だったし、こんな風に軽口をたたくと思っていなかったのか、その場にいた工員たちは一瞬、手が止まった。しかし、すぐさま、真実を聞いたOは「あの野郎嘘ついたな」といって、悔しそうに歯をむき出した。仕返しをたくらんでいる。おれの純情が踏みにじられたと言って。滝沢には“純情”の意味がさっぱりわからない。みんな面白がって「やったれ!足腰立たなくなるまで、搾り取ったれや」と笑い崩れた。
「ふーん。アメリカはずいぶんと気前いいな」
感心した一人に、つかさずもう一人が返した。
「あんた必要ないだろ」
「うん。オレ、ズルむけだもん」
さらなる笑いがこぼれる。生き残った後は、誰にでも、笑いが必要なのかもしれない。そうでないと、死に引きずられてしまう。滝沢も横で聞いていて、同じように笑ってしまった。
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