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 口調は朗らかだ。少なくとも、苦痛に思っていない。それは、滝沢に介入する隙を与えない。 「フハッ」  Oはすでに笑いすぎて、むせ、もらったビスケットを口からこぼしていた。  でも、海兵隊員の彼はOの耳元で名前を呼び、囁き続けた。そういう屈託のない若さは、嫌悪するものばかりではなかった。愛の言葉は気恥ずかしいが、ほだされてしまいそうな力がある。あの海兵隊員は確かに、うぶでひたむきで、可愛かったのだ。  流石に囁き返さなかったにしても、哀願されたら、熱い息のあいだ、上擦った悲鳴に乗せて相手の名前を呼び返しただろに。  Oは日に日によみがえっていった。とにかく食べていた。食い物は味気のないイモから、たっぷりと甘いチョコ・バーに質が上がった。おまけにもらったタバコと食べ物を交換していち早く飢餓から抜け出していた。  滝沢は少しだけほっとした。食うためにやっているのだ。後藤を忘れたわけではない。そんな薄情ものではないはずだ。  だが、それでもあの若さは、意地のようなかたくなさをほぐしたのだろうと思う。
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